講座紹介

教授からのメッセージ

本講座は1947年5月に開講された衛生学講座に始まります。3代目の車谷典男前教授の任期中の2006年4月に地域健康医学講座と改称され、2016年10月に疫学・予防医学講座に名称が変更されました。現職の私は2017年4月に着任いたしました。講座名の英語表記はDepartment of Epidemiologyです。

 学部教育では第3学年の衛生学・公衆衛生学Ⅰを担当しており、疫学・統計解析を中心として産業衛生、環境衛生、EBM(Evidence Based Medicine)などの領域を教育しています。また大学院の修士課程および博士課程においても疫学分野の研究を指導しています。

 本講座では、生体リズムに着目とした疫学研究を実施しています。近年の生体リズムに関する基礎研究の進歩は著しく、時計遺伝子が制御する生体リズムが、睡眠だけでなく内分泌・代謝・循環・精神機能など多くの生理現象に関与しており、生活環境の「光」「食事」「身体活動」「温度」が、外部環境と生体リズムを同調させる重要なシグナルとなっていることが明らかになってきました。一方で、昼夜逆転した環境で働くシフトワーカーでは、肥満症・糖尿病・脂質異常症・高血圧・睡眠障害・うつ・脳卒中・虚血性心疾患・がんなどの疾患のリスクになることから、生体リズム障害が、これらの疾病の原因である可能性を示唆されていますが、生体リズムに及ぼす環境要因を実測し、長期的な健康影響を調査した疫学研究はこれまでみられませんでした。
 
 私どもの疫学研究では、一般人の日常生活下で「光」「食事」「身体活動」「温度」を測定し、生体リズムや疾病発症、死亡率への影響を調べており、世界でも類をみない研究です。これまでに夜間の光曝露が多いほど、生体リズムのひとつの指標であるメラトニン分泌量が減少し、肥満やうつ症状の発症リスクが上昇することや寒冷曝露により血圧モーニングサージが高いことなど新規性の高い研究成果を発表してきました。
 
 疫学・予防医学講座では、疫学研究の成果から、疾病を予防のために理想的な温度や光環境、食事や運動習慣を提案し、健康増進や疾病予防に寄与することで社会貢献することをめざしています。常生活に密接に関わる環境因子や生活習慣の健康影響に関する研究に興味のある方は是非お立ちりください。